1. うま酒 三輪の山 ・・・
長歌
うま酒 三輪の山
あおによし 奈良の山の
山の間に いかくるまでに
道のくま いさかるまで
つばらにも 見つつ行かむを
しばしばも 見さけむ山を
心なく 雲の かくさふべしや
反歌
三輪山を しかもかくすか
雲だにも 心あらなむ
かくさふべし也
巻1-17.18 額田王
歌の意味
長歌
なつかしい三輪山よ。この山が奈良の山々の間に隠れてしまうまで、また行く道の曲がり角が幾つも幾つも後ろに積もり重なるまで、充分に眺めていきたい山であるものを、たびたび振り返っても見たい山であるものを、無常にもあんなに雲が隠してしまってよいものだろうか。
反歌
名残惜しい三輪山をどうして雲があんなに隠すのか。人はともかく、せめて雲だけでもやさしい情があってほしい。あんなに隠すべきであろうか。
額田王
舒明天皇三年(632)頃の生まれと考えられ天智・天武両朝にわたって情熱の歌人として豊かな才能を発揮する。
揮毫者
中河与一。昭和期の小説家。「天の夕顔」で知られる新感覚派の作家。
歌碑の場所 1番
景行天皇陵南西の三差路の角。
提供:万葉うたいびと風香