桜井市大福の大念寺の境内入口向かって左側に南面する地蔵堂に祀られているのが知る人ぞ知る「泡子地蔵」です。元は初瀬街道(横大路)と橘街道の交差点北東角(宇ヲチダ)にあったのをこの場所に移したもので、本居宣長は『菅笠日記』で「・・・ここは八木といふ所より、桜井へ通ふ大道なり。横内などいふ里を過ぎて、大福村などといふも右の方に見ゆ・少ゆきて、ちまたなる所に地蔵の堂あり」(明和9年3月11日条)と記しています。
桜井市史によると「光背と像を一石で彫み、別石の蓮華座に坐す地蔵で、顔面が近年白く塗られているのが特徴的です。石材は凝灰岩の軟かい石で総高204cm、像高87cmを計ります。像は舟形光背にさらに二重の円光背を陽刻し、中心に蓮華文を巡らしています。」とあります。
光背には頂上に阿弥陀坐像を陽刻し、左右に三体ずつの小さい地蔵立像を巡らしています。泡子地蔵と呼ばれるのは、この化仏から出た名かもしれません。後背裏面には元弘三年(1333年)廿四日 大願主妙覺の刻銘があり、地蔵の向って右に立っている阿弥陀石仏(像高90cm)も、後背裹に慶長十年(1605年)二月十五日 六西中法界の文字を刻んでいます。
よく知られる三十八柱(みそやはしや)神社の近くにあり横大路の散策時には是非、おたずねください。(見学自由)